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宮本紗代

患者さんから学んだこと。DOよりBEで人の心に残りたい。

こんにちは!AWAKE&編集部です。会員の皆様の人生観や、大切にしていること、日々の気づきなどをお伺いする、「AWAKE&会員インタビュー企画」をお届けします!

今回は看護師をされながら浅草を拠点にエシカルな活動にも力を注ぐ、宮本 紗代さんをお招きし、看護師としての仕事とエシカルな活動への想いについて詳しく伺いました。

Profile

宮本紗代(みやもとさよ)
看護師/浅草エシカルプロジェクト共同代表。看護師としてがん情報発信・相談支援に携わる傍ら、人や環境は互いに影響し合う存在であることを意識しながら生きていくことの大切さを認識し、エシカルへの関心を深める。現在は浅草エシカルプロジェクトの共同代表等多方面の活動を通して日本の心性からエシカルな心を考え、広げていく活動に取り組む。
instagram :@sayomiyamoto @asakusa_ethical


塾の先生に、看護理論の面白さを教えてもらいました。

—— 今日のゲストは、AWAKE&会員の宮本 紗代さんです。現在の活動内容を教えてください。

宮本 紗代と申します。現在看護師をしており、がん情報の発信や研修業務を行っています。また「豊かな心を醸成し、エシカルの輪を浅草から広げる」というコンセプトで活動する浅草エシカルプロジェクトには、共同代表として取り組んでいます。

ー まずは看護師を目指したきっかけを教えてください

10歳下の妹が生まれた時、母の姿を見たことが大きなきっかけですね。母は妹を出産する際、前置胎盤という胎盤が赤ちゃんの出口を覆ってしまっている状態で、数ヶ月間入院していたんです。帝王切開で出産が終わったあと、苦しそうに手術室から出てきた姿を目にしました。母はいつも強く自分を守ってくれてる存在だったため、そんな姿に驚き、「誰でも弱ってしまう瞬間があるんだ」と感じました。それが初めのきっかけです。

また、中学時代の塾の先生が看護学生で、人間の存在はあらゆるものに影響されている複雑な存在だということを教えてくれました。その話がとても興味深くて。他にも様々なところで種をもらい、看護師を目指すことを決意したのです。看護学生時代は、塾の先生の影響もあり看護理論に関心を持って勉強していました。

ー 看護理論とはどのようなものですか?

看護理論は人間科学と近しいと言われていて、ここでは1つ、Jean Watsonのトランスパーソナルケアリング」を紹介します。

病がある人は自身がもともと持っている波動のリズムが崩れてしまっている可能性があるのですが、その波動を良い方向へ押し上げてあげるには、他の誰かの波動と合わせて、波動の変化を導くことが大切なんです。

看護師は、「発する言葉や行動すべてを表現方法」と捉え、その患者さんに合った波動を作り、波の変化をもたらすことで心を支えることができると言われています。面白く、とても深い理論ですよね。

看護が対象とする「人」は、常に周囲の人や環境と互いに影響し合いながら生きている「開放的」な存在であるというシステム理論も有名な看護理論のひとつで、これらの学びは、先のエシカルへの関心にも繋がっていきました。


1人の患者さんとの出会いから考え始めた“心の在り方”

浅草エシカルプロジェクト(左が紗代さん)

ー ありがとうございます。エシカルな活動の原体験も教えていただけますか?

エシカルな活動を始めた原体験でいうと、大きく2つエピソードがあります。

まず、看護師の経験で、命には限りがあることを感じたのは大きいですね。

私は婦人科にいたので、子宮頸がんになり30代で亡くなる方も少なからず見ていました。自分と年齢も近い分、いつ自分もがんと診断されるかわからないですし、私はどう生きたいのかをよく考えていたんです。

最近は持っているスキルや、何かを成し遂げた“DO”で他人から評価を受けて、価値とみなされることが多く、それがないことで悩んでしまう人も多いと思います。でも私は、どんな心を持っているのか、いわゆる“BE”の状態で、誰かの心に残りたいと思っています。

人は死に瀕したとき、自主的に行動して好きなところへ足を運んだり、仕事をして社会へ還元したりすることは難しくなります。しかし、心から溢れ出る優しさ、慎ましさは変わることがありません。

これまでどう生きてきたのか、その生き様が映し出された“心”がその人自身を作り上げ、行動や言動に表れるということ。そして、人生において心を磨いていくことこそが大事であると、今は亡きある素敵な患者さんから学びました。これがエシカルな活動をはじめた原体験の1つです。

ーすごく素敵なお話ですね、とても響きました。

もう1つの原体験は、出雲の神道からの学びでした。父の実家が島根県出雲市で、出雲大社が近くにあります。日本の「神道」従来の宗教のように“教え”はありません。華道や茶道の動作においても、決まりはあってもその精神性自体は自分たちで感じ取っていくものですよね。

日本人は脈々と繋がってきた神道を通して、自ずとまっとうな生き方ができるようになっていると言われています。お詣りでお祈りをするのも、ある意味自分の心を見て自身がどうありたいかを考え、統制してるんですね。

今の社会はとにかく便利で、何も考えなくても不自由ない生活ができるからこそ、自分自身で心を律し、統制する精神が求められていると感じます。日本の文化や趣というのは、自分自身や物事をまっすぐ見つめるエシカルな心と繋がっておりその心を広めたいという想いで現在エシカルな活動を行っています。

また「無為自然」という考え方がありますが、これは「あるがままの姿を受け入れる」という意味で、ここにも大切な神道の考えが表れています。

ー 自分を律そうとしても、それに反する行動をとってしまうこともあると思うのですが、「あるがままの姿を受け入れる」ことを、どのように捉えていますか?

自分の私利私欲で生きることは「あるがまま」ではありますが、いつか心地よさとのバランスが崩れ「このままじゃ駄目だ」と感じる瞬間がくると思います。それに気付けたときが自分を律することができるタイミングです。自分が「いいな」と思える行動を取っていると心地よくいられるので、そのバランスを取ることが大事ですね。


「自分の個性を知ること」と、「エシカルな感性」の関係

浅草クリーンアップの様子(下段左から2番目が紗代さん)

ー エシカルな活動を行う中で、感動したことはありますか?

2つご紹介します。

1つは、浅草エシカルの活動を通して自身の思考が波及していくと、有難いことに様々な人が集まってきてくれて感動しています。活動を通して今後もいろんな方と繋がり、居心地のいいコミュニティを築いていきたいですね。

もう1つは、自分の個性を見つけたことです。実は少し前まで、自分には個性がないと悩んでいました。何かに突出して成し遂げたことや、一つのことをやり続けプロフェッショナルな域に達するような経験がなかったからです。

しかし感性を研ぎ澄ませ、何に幸せを感じるのか、何に感動して心震えるのかなど、自分の心が大きく反応する瞬間を丁寧に集めていくと、それが自分自身の個性になるということに気づき、大きく感動しました。

宮本紗代

ー 無理に個性を探そうとしなくても、今ある感覚を研ぎ澄ませれば見つかるということですね。

はい。そして、自分の個性を知ることは、ある意味エシカルな行動にも繋がってくると思うんです。自分が好きなものがあれば、それを大事にしたくなるものです。自分の個性を知ることがエシカルな感性を育ててくれると気づきました。

エシカルな活動を通して生きる意味を見出せた気がしています。


体験を通して循環を感じ、物を大切にする心を伝える。

ー 活動してる中で難しいと感じることはありますか?

あまり関心を示さない人たちに対して、どうエシカルな物事に関心を持ってもらい、浅草の街に来てもらうことができるだろう?と試行錯誤しているところです。

ただ、やはり人それぞれの感性があるので、浅草エシカルの活動には日本の文化の心地よさを感じる人たちが集まってくるのは自然な流れかなとも思います。

ー 浅草エシカルの具体的な活動内容を教えてください!

定期的に行っているのは浅草のクリーンアップ服交換会ですね。物事の循環を感じ、物を大切にする心を体験を通して伝えていきたいという趣旨で開催しています。

あと力を入れているのは、季節や日本文化を愛でるイベントです。伝統的な文化や先人たちの知恵、心意気まで学ぶ機会になればと思っています。先日は魅力的な神主さんとコラボし、神道から学ぶエシカルな心をテーマにしたイベントを開催しました。

ー 服交換会はどのような仕組みで交換できるのですか?

3着持ってきて3着持って帰るという仕組みです。その服の思い出や、どんな人に着てほしいかを紙に書き、最後には誰から誰に渡ったのか分かるようにしています。服に込められた価値で選ぶ感覚です。

あくまでも服の循環ではありますが、人と人との関わり合いであることが感じられる仕掛けを作っているのが、浅草エシカルの服交換会の特徴です。


相手の感情に寄り添う努力をする。

ーAWAKE&で好きなコースを教えてください!

エンパシーコースです。

エンパシーコース_佐藤将

初めにお伝えした、看護理論の“トランスパーソナルケアリング”でも、エンパシーコースでの教えと同様に、共感の姿勢を大事にしています。例えば誰かに不幸が生じてるとき、その人が今どういう感情になってるのかを感じようとします。

また、エンパシーとは「外と内双方への進化である」と講義の中で話がありましたが、このグローバルな社会でエシカルな行動を起こす上で、自分自身と相手を理解しようとする“エンパシー能力”はとても大切だと思いました。


周りへの影響も考えながら、自分の生き方を見つめていたい。

浅草エシカル共同代表

ー 人生かけて取り組みたいことはありますか?

2つあります。

1つは看護師として、がんになっても生きやすい社会を作っていきたいです。

もう1つはエシカルな側面で、現代の日本人が日本に生まれたからこそ得られる心や心意気、日本文化の心地よさを、どうしたら身近で面白いと感じ、関心を持ち続けてもらえるか考え続けていくことです。

浅草エシカルのプロジェクトはイベントを定期的に開催してるので、ぜひご参加ください!

ー 最後に、紗代さんが大事にしてる考え方を教えてください。

これは仏教用語なのですが、「福田」という言葉を大事にしてます。福田は「他者に恵みを施す人はやがてその高徳をもってその人自らに福を生じさせるだろう」という意味で、利他的な考えはいずれ自分に返ってくるし、それができるくらい心に余裕がある状態でいることが大事ですよということ。

また、大学時代に『インビクタス』という、南アフリカの大統領、ネルソンマンデラの映画を見たのですが、その詞の最後の一節で「私が我が運命の支配者、私が我が魂の指揮官なのだ」という言葉があり、とても心に響きました。

人生には自分で左右できない物事もあるけど、その中でも自分の生き方は自らの手で切り開いていき、人生を楽しみたいと思っています。

ー 紗代さんの生きることに対しての価値観、日本文化とエシカルの繋がりを感じることができた興味深いお話しでした。ありがとうございました!



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